「地球と人の時間」はじめました。

社会科・探究学習
2021年4月1日の駅からの夕焼け。
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「地球と人の時間」ってなんだ?

2021年度の社会科の授業が、本格的に始まった。社会科という言葉を使うのではなく「地球と人の時間」と呼ぶことにした。この言葉にはいくつかの想いを込めた。

一人ひとりの子どもが幸せに、自由に生きていってほしい、それぞれがなりたい自分になっていってほしい。そのように思う僕の根っこのような部分が生まれたのは、大学の憲法の講義で第13条幸福追求権に感銘を受けてからだ。

人は、幸福を追求していくとき、地球と共に生きることや、他の人と共に生きることは避けられない。自分の幸せや自由だけを考えるのでは、本当の幸せや自由は手に入らないと、僕は思っている。

だから自分の幸せや自由を考えるとともに、「それは地球にとっては、どうなんだろう?」「他の人にとっては、どうなんだろう?」ということを考える力を身につけてほしい。

その力はテストのためだけに暗記して、すぐに忘れてしまっていい知識ではない。社会科は、中学校では地理、歴史、公民と分かれ、高校、大学と進むにつれて細分化が進んで枝分かれし、学ぶことが細かくなり、増えていく。

社会科の学びの枝分かれが進む前に、子どもたちに考えて欲しい「幹」の部分が確実にある。それは「人は幸せに生きるための努力や工夫、失敗を過去も現在もたくさんしている。それを学んだあなたはどのような生き方をしたいか?どのような社会を作っていきたいか?」ということ。

社会科は内容教科であり、同僚によるとどの教科よりも圧倒的に学ぶべき語彙の量が多いという。確かに、本を読むことが難しい子は、社会科の授業で苦労をしていると感じる。

もちろん、語彙を獲得していくことは必須ではあるけれども、「概念」を学ぶことで「幹」について考えることができる力を身につけてもらいたい。(「概念」で学習を進めていくことについては、以下の本がとても参考になった)

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授業の進め方の全体像

対象は、5年生、6年生。そして、7年生、8年生だ。

3年生、4年生は「地球と人の時間」という時間は設けず、テーマプロジェクトの時間に取り組んでいく。

とは言っても、プロジェクトがカリキュラムの中心の学校であるので、「地球と人の時間」として僕が持っているコマは、5・6年生で週2コマ、7・8年生で週2コマということになっているので、決して多いわけではない。(1コマは、グループごとに全員が同じ時間に来る。もう1コマは、自分で都合のつく時間を選んで来る)

グループごとに全員が同じ時間に来る1コマは、

①今日のニュースなどのインストラクション

②みんなでのやりとり

③次回までの、課題の提示

というのが大きな流れ。

また、週1コマ子どもが都合のつく時間を選んでくる時間は、人によって3つの過ごし方がある。

(1)プロジェクトの相談

自分が進めているプロジェクトのことで、「地球と人の時間」のスタッフに相談する過ごし方。例えるなら、大学の教授の研究室を訪ねて自分の研究の進め方を相談しにいくイメージ。

複数人の子ども達がいたら、それぞれが進めていることを皆で相談したり、今やっていることを共有することで、新しいアイデアが生まれる時間になればいいと思う。

例えるなら、大学のゼミのイメージ。ここで起きたプロジェクトは、スタートアップjrなどのプレゼン大会に出るなど、様々なアウトプットの機会に積極的に参加することを推奨していきたい。

(2)課題への取り組み

土台の時間に出されている課題に取り組むこと。一人で課題を進めるのが、ちょっと心配、スタッフや友達と進めたい、というときにスタッフに相談できる。45分間が1コマだけれども何分相談したり課題に取り組んだりするかも自分で決める。

課題をして10分で終われば、部屋を出るということも可能だ。これは昨年度オンライン授業をしていた時に、ZOOMで相談教室を作成して、いつでも子どもが訪ねられるようにしたスタッフがいて、それの真似だ。オンラインでも、Googleクラスルームや、校内SNSで、子どもたちの相談や質問を受け付ける。

(3)自学

自分で問題集や参考書を購入して、それも進めていきたいという子に、学ぶペースを一緒に作ったり、ミニレッスンもする。

何を子どもに手渡していくのか?

ひとまず夏休み前までは、全員で集まって取り組む週1コマの授業でも、選択してくる週1コマも授業でも、取り組む領域を限定している。理想的には、最初からどの領域も選べたらいいのだろう。

ただ、同じ領域を学ぶからこそ、子どもたち同士での学び合う関係も作りやすいのではないか、という理由と僕らスタッフの教材研究をなるべく同じ領域に集中させることで、子どもの学びを深めたいという理由がある。

例えば、5・6年生は、歴史的分野の領域の「人物・伝記」というテーマで、大きな問いは「どのような人々によって歴史はつくられてきたのか?」から始めている。7・8年生は、公民的分野の領域の、「基本的人権」というテーマで、大きな問いは「人権の課題をどのように解決できるのか?」から始めている。

そして、選択する週1コマの授業では、中学校3年生までに学んで欲しいこと26個のテーマが載っている「学びの地図」を子どもとみながら、どんなことを学びたいかを考えるところから始まった。

さっそく、子どもとのやりとりで、自分の力の足りなさから、困ったことも起こった。

「貧困」のことがやってみたいけど、どういうところからやってみたらいい?

「持続可能な社会」のことをやってみたいけど、どういうことからやってみたい?

「戦争」のことやってみたいんだよね〜〜。

と、4名の子どもたちが同じ時間に部屋にきて質問をしてきた。学ぶ意欲がとてもある子達なので、きっと強い動機もあると思い、聞いてみた。「どうして、そこやってみたいと思ったの?どんなことやってみたい?」

すると、その背景には、それぞれの子が過去に住んでいた地域などの経験や、本、ニュース、テレビ番組の影響から考えていることがあるようだった。

そして最初は教科書を使って関係しそうなところに簡単なミニレッスンをしつつ、こんな本もあるから読んでみたらどうだろう?とライブラリーにある本を紹介したり、こんな動画あるよ、とNHKforSchoolなどの動画を紹介するところから始めた。

30分程度過ごし、次の予定があった子は部屋を去って行った。で、部屋に一人残された僕は、いろいろ考えることになる。

「これからどんなことを子どもに手渡して、経験をしてもらったらいいのだろう?」

「その子どもに応じた、適切な教材は何だろう?」

すぐに答えは出ない。

例えば、ラボではスタッフが意図を持って環境を整備していて、そこには様々な道具や材料、実験の道具、問いなどがある。それと同じようなこと「地球と人の時間」で準備するとしたら、どういうものになるのだろう?

それとは違うものを準備するとしたら、どういうものになるのだろう?本?映像?人と繋ぐこと?フィールドワーク?などなど・・・。

当然ながら、学習指導要領を精選して作成した「学びの地図」に載っている26個の問い一つひとつについてかなりの量の教材研究が必要になってくる。

めちゃめちゃハードだなぁと思いつつも、まだまだ自分にも知らない世界はたくさんあるので、子どもと一緒に、学びの地図を旅していくことは楽しみだ。

きっと、一人ひとりの子どもの学びは予想もしないような面白い方向に進んでいくのだろう。どこに辿り着くかわからない、この「地球と人の時間」をめいっぱい味わっていきたい。1年後、自分が予想もしないような面白いところに辿り着いている予感がしている。

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