数学でのちょっとした幸せ(1学期数学)

特別支援
7月に行った群馬県でのキャンプ。天文台からの景色が幸せ。

メイン担当をしている授業の1つが「数学」。数学の授業は、自由進度学習での経験が2、3年あるだけで、特別支援学級で何をどう進めたらいいか、正直、僕はわからないことだらけのスタートだった。同僚に相談したところ、「日常生活や、就労に活かせるように、足し算、引き算、お金の計算、時計の学習は必須。掛け算は一部の生徒しか難しいかもしれない」とのことだった。国語と同様、アンケートから始めた。

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計算中心の前半戦

アンケート結果には、色々書かれていた。「とにかくみんなで仲良く、協力して問題を解きたい」「苦手だけどポジティブに頑張りたい」「分母の違う分数の難しい計算を、どんどんやっていきたい」「計算と時計が苦手だから、そこをできるようになりたい」

このアンケート結果を読み、「みんなで協力して問題を解くこと」と「個別の課題に取り組むこと」の2本柱でやってみようと計画した。ただ、4、5月は、いろいろあって生徒同士がコミュニケーションを取れる状態ではなく、個別の課題にバラバラに取り組む時間中心になった。個別の課題は「100マス計算タイムアタック(足し算、引き算、掛け算)」「時計(読むこと、何分後の計算)」「お金(おつり、足し算)」「逆ピラミッド算」「クロス足し算」この課題を作るときには、中尾 繁樹  (著, 編集)『中学校特別支援教育 指導スキル大全』(p.78)を参考に作成した。どんな計算ができるのかのチェックをするメモを手元におき、一人ひとりを見ることにした。例えば、計算についてはこんな感じ。

<計算のチェック>

  • 2桁➕2桁の足し算(繰り上がりを含む)ができる。
  • 2桁➖2桁の引き算(繰り下がり含む)ができる。
  • 3桁以上の足し算・引き算ができる。
  • 1桁✖️1桁の掛け算ができる。
  • 2桁✖️2桁以上の掛け算ができる。
  • 3桁➗1桁の割り算ができる(あまりが求められる、小数点以下まで求められる)
  • 3桁以上➗2桁以上の割り算ができる。
  • 四捨五入ができる。
  • ①( )→②✖️・➗→③➕・➖の順にできる
中尾 繁樹  (著, 編集)『中学校特別支援教育 指導スキル大全』より

回数を重ねるごとに、それぞれの計算レベルは上がっている実感はあるけど、「学校ってどういう場所だっけ?」という違和感が自分の中でむくむくと湧き上がってくる。こういう違和感を感じたときには、パッと動くとうまくいくことが多いので、ぼちぼちやり方を変えてみることになった。

教室の「構造化」と、ちょっとした幸せな時間を増やす

ちょうど、同じ時期に、「とにかく仲良く、みんなで問題を解きたい」とアンケートに書いていた生徒が、「先生(※こう呼ばれるのは、まだ違和感がある)、計算ができるようになるのは、嬉しいんですけど、早くみんなで楽しく問題を解きたいんです。そういう授業の方がいいです」と伝えに来てくれた。ありがたかった。そこで、授業の流れを、以下のようにした。(毎授業のラストに、Googleクラスルームでの振り返りはあり)

サークル→計算→単元→単元のラストは、Kahoot

教室のレイアウトも変更。「教室リフォーム」は、生徒と一緒にやる実践だという思いが僕にはあるので、これは「教室リフォーム」というよりも、教室の「構造化」。今まで知らず知らずにはやっていたけど、特別支援教育には、「構造化」という理論がある。その理解には、西島衛治  (著) 『図解自閉症児の教室の構造化: 特別支援教室のための教室づくりと実践例 』 や、LITALICOの「TEACCHとは?自閉スペクトラム症(ASD)の人々を生涯支援するプログラムの概要を紹介」の記事が参考になった。

右奥に見えるのが、グループ学習コーナー。音に非常に敏感な子もいるので、本当は、椅子の足にテニスボールをはかせたい。

(1)サークル

ミニホワイトボードを使って、「Good&New」や、GoodだけではないBadも話せるような「お祝いと嘆き」をしている。5分くらいで終わることが多いけど、ついつい盛り上がってしまって、10分以上話していることも。ある生徒が、「長年育ててきた、サボテンに初めて花が咲いて、嬉しかった」と言ったときに、「よかったねえ」「すごいねえ」と他の生徒まで嬉しそうだったことが印象的。

(2)計算の時間

一人ひとりの課題や希望に応じて、100マス、時計、お金などに取り組む。ワーキングメモリのトレーニングに、最近興味があって、下記の本を読み始めているのだけれど、もう少しこの計算の時間の意義を自分の中でもしっくりさせたい。

【参考】『ワーキングメモリと発達障害[原著第2版]: 教師のための実践ガイド』 

(3)単元の時間

長さ、重さの2つの単元を1学期の後半は実施した。生活単元学習や日々の学習の様子をみていると、体験の少なさからか長さや重さの感覚が、結構苦手そう。なので、みんなで定規やメジャー、はかりを使って長さや重さを調べまくって、単位の学習もしつつ、たくさんの重さや長さを集めた。

デジタルのはかりだけでなく、アナログのこういうはかりを100均で調達。

最後に、集めた重さや、長さで「じゃんけん大会」。ルールは、僕が出したお題に適した長さや重さのものを調べたものリストから出して、一番近い人が勝ち。一度使ったものは、使えない。お題は「先生の身長」「一番薄いもの」など。お題が進むにつれて、みんなの手札が少なくなり、「先生の身長」のお題のときに、「あ〜〜!!もう、鉛筆の長さしか残ってないじゃん!まぁ、いっか〜。」という生徒の潔さにみんなで爆笑したのは、いい思い出。

(4)Kahoot

「カフート&ロイロマニア」さんの投稿を参考にした。PCがとても得意な生徒がいて、その子の長所が活きたらいいな&みんなで問題づくりや問題を解くことが楽しめたらいいな、と思ってこの活動を取り入れた。残念なことに、Chromebookなのに立ち上がりが遅かったり、教師用ノートPCは、校務用とインターネット用とでは、アカウントが異なるので、いちいちログアウト・ログインをしないといけない手間があったりする・・・。でも、生徒たちの様子をみていると、やって良かった。PCが得意な生徒がログインのサポートで、他の生徒から感謝されたり。数学の問題にまじって、個人的な趣味の問題が入ってて、「そんなん、わかんね〜よ〜〜!」と半分怒りながら笑っていたりする生徒がいたり。なかなか楽しい時間を過ごさせてもらっている。

2学期は、こうしたい。

サークルや、Kahootなどを通じて、生徒たちのコミュニケーションが、少しずつ増えてきて、「計算の訓練」みたいな前半戦から、生徒たちが少しずつ楽しそうな雰囲気に変わっていった手応えを1学期だったけど、「自分っていいなあ」「仲間っていいなぁ」と感じるような工夫を、もっとしていきたい。

2学期は、数学の学びを使って、いろいろなものをつくるという単元を中心に置いてみたらどうだろう?数学の学習もしつつ、手先のトレーニングにもなり、できた作品をお互いにフィードバックするようなことが、この生徒たちにいい気がする。(みんなで知恵を出し合って、みんなで問題を解くは、現状難しそう)

小学校の数学の教科書をザーッと読んでみて、生徒たちの就労や日常生活にも活かせような単元は、「図形」「立体」「表とグラフ」「円と球」「角度」あたりかな。(比例、反比例、分数、小数あたりはどこまでやろうか迷い中)

例えば、図形での模様作りで、敷き詰めのチャレンジは楽しそう。

(参考)荒木義明さん  日本テセレーションデザイン協会

「算数の実験大図鑑」からも、算数ビンゴゲーム、ドリームキャッチャーづくりなどもやってみたい。

いろいろやったり考えたりしたものの、「就労」「日常生活」という言葉は頭からなかなか離れない。

ただ、数学の時間に、kahootで、ゲラゲラ笑うような時間があったり、サボテンの花をお祝いしちゃう時間があったりしてもいいじゃん、って思うのです。「学校って何をするところなんだろう?」「目の前の特別支援学級の生徒たちに、必要な経験ってなんだろう?」ということは、2学期以降も考え続けたい。

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